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本書は、ハイエクのポリティカル・エコノミーの思想、方法論、哲学を主題に論じた研究書である。以下、印象に残ったハイエクの言葉を抜粋してみる。
社会科学の中心的問題は次の点にある。各々の個人がもつ断片的な知識の結合が、いかにして次のような結果をもたらすのか、すなわち、たとえ意図的にもたらされることがあるとしても、それを実現するためには、いかなる単一の個人でももちえないような知識を、指揮をとる人間がもっている必要があるような結果をいかにしてもたらすのかという問題である。(p97)
もしわれわれが価格メカニズムの真の機能を理解したいのであれば、われわれは価格メカニズムを情報伝達のためのメカニズムとみなければならない。・・・このシステムについてのもっとも重要な事実は、このメカニズムが機能するのに要する知識が節約されることである。・・・価格メカニズムを情報伝達システムとして描写するのは、たんなる比喩以上のものである。(p122)
人間は自らの知識の増大を誇る。しかし、人間自身が自らつくりだしたものの結果として、その意識的知識の限界と、したがって、その意識的行為にとって意味をもつ無知の範囲とは、たえず増大してきた。・・・われわれが文明化すればするほど、各個人は、人間の文明の働きを左右する事実についてますます相対的に無知になるにちがいない。知識の文化それ自体が、これに関する知識の多くについての個人の無知を不可避的に増大させるのである。(p155)
私が確信するようになったのは、説明すべき対象である市場秩序の目的は、・・・その秩序を規定する特定の事実のほとんどについて、すべての人が無知であるという免れがたい状態にうまく対処する点にある、ということであった。(p155)
自生的秩序は・・・どのような個人にも手の届かない情報処理能力をもっている。・・・このような能力をもっている唯一の制度は制度それ自体であり、制度を内省的方法で利用することはできないのである。(p174)
人間は目的追求的な動物であるとともに、ルール遵守的な動物である。そして、人間が成功しているのは、・・・人間の思考や行為がルールによって支配されているからである。人間が部分的にしか知らない世界においてうまくふるまうという問題は、こうしてルールを固守することによって解決されてきたのである。(p183)
すべての思考において、われわれは意識していないルールによって支配されて(あるいは操作されてさえ)いる。(P195)
経済学は、通常、競争が生み出す秩序を均衡の属性であるとみなしている。しかし、均衡とは適切な用語ではない。なぜなら、それはすべての事実がすでに発見され、したがって競争が終わっていることを前提としているからである。「秩序」という概念が・・・均衡という概念よりも好ましいと私は思うが、それは次のような利点をもっている。すなわち、われわれは秩序をさまざまな程度で研究されるべきものとして語ることが出来るし、秩序は変化の過程を通じて維持されうるからである。(p240)
進化的秩序の理論が最適性や効率性の理論でないのは、まさに、それが最終形態の理論ではなく、過程の理論だからである。・・・競争が称賛されるのは、それがわれわれの期待を実現するからではなく、われわれが期待しなかったであろうことを達成するからである。(p243)
とはいえ、知識の発見・伝達・貯蔵を容易にするメカニズムと構造の能力は、けっして「完全」ではないので、調整も完全、効率的、最適といったものからほど遠い。市場における活動は試行錯誤を通じて進み、したがってたえざる期待はずれを必然的にもたらしながら、自生的な社会経済秩序を生み出す。この秩序は、計画・行為・帰結の均衡ないしは完全な調整として描くことはできないが、けっしてたんなる混沌ではない。(p262)
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