生物と無生物のあいだ

4061498916生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
福岡 伸一
講談社 2007-05-18

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生命とは何か? DNAのらせん構造が発見されて以来、生物の定義は「自己複製するもの」である。だが、それだけでは不十分だと著者は言う。生物と無生物のあいだには存在するものは何なのか、生命の特徴を捉えるにはどんな条件があるのか、本書はそんな途方もない問いに挑んだ生物学者が書き記した一冊。

話は野口秀雄の黄熱病研究に始まり、DNAのらせん構造の解明まで、生物学の歴史を紐解きながら進められる。スケールの大きな舞台設定とそこに存在する研究者達の物語に、気がついたらのめり込んでしまっていた。

特に感動したのがこの「動的平衡」の概念である。

生物が生きているかぎり、栄養学的要求とは無関係に、生体高分子も低分子代謝物質もともに変化して止まない。生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である。(p164)

つまり、エントロピー増大の法則に抗う唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、むしろその仕組み自体を流れの中に置くことなのである。つまり流れこそが、生物の内部に必然的に発生するエントロピーを排出する機能を担っていることになるのだ。(p167)

秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。(p166)

生命を、ある瞬間をもって観察してもそれは単なる物体を観察していることにしかならない。動的平衡にある流れこそが生命そのものなのだ。

ちょっと待て、確かこんなこと「砂の女」にも書いてあったな・・・。安部公房も恐るべし。

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