感動をつくれますか?
![]() | 感動をつくれますか? (角川oneテーマ21) 久石 譲 角川書店 2006-08 |
絵を描く人は変わった人が多い
時間軸と空間時軸の中で創造されるものは、みな論理的構造を持っている。言葉も「あ」だけでは意味を持たないし、音楽も「ド」の音だけでは意味を持たず、「ドミソ」と音が連ならなくてはならない。つまり、音楽も文学も映画なども、時間の経過のうえで成り立っているものは、論理的構造を持っているということになる。それに比べて、絵は作品が表現するものが見た瞬間に分かる。瞬時に世界を表現できる力がある。時間の経過を伴わない分、論理的なものより感覚に直に訴える。だから、絵の人は考え方や行動においても、感覚的なものが突出する面が強い。
必死の思いから、人を感動させるものが生まれる
作家には、論理的な思考と感覚的なひらめきを要する。論理的思考の基になるのが、自分の中にある知識や体験などの集積だ。何を学び、何を体験してきたかが、論理性の根本である。感性の95%くらいは、実はこれなのではないか。つまり、論理性に基づいて思考していけば、あるレベルに達する。だが、問題はそれさえあれば作曲ができるということではないところだ。肝心な要素は、残りの5パーセントの中にある。創作にオリジナリティを与えるその人ならではのスパイス。これこそが創造の肝だ。
論理や理性がなければ人に受け入れてもらえるようなものは作れないが、すべてを頭で整理しても、人の心を震わせる音楽はできない。もがいて、必死の思いで何かを生み出そうとする。その先に、意識からそぎ落とされたところに達すると、人を感動させるような力を持った音楽が生まれてくる。