カルロス・ゴーンに学ぶマネジメント

4478321000ルネッサンス ― 再生への挑戦
カルロス・ゴーン 中川 治子
ダイヤモンド社 2001-10-25

マネジメントは実地で学ぶ

年月を重ねるについれて、マネジメントとは職人の手仕事のようなもので、秘訣などなく、実際にみずから手掛け、試行錯誤し、多くの重要な決断を下すことによって学ぶものだという思いが強くなった。
ことはいたってシンプルである。私は実地経験を積み上げてマネジメントのさまざまな基礎を学んだそれだけのことである。基礎というのはつまり、問題を特定する、優先順位を確定する、あらゆるレベルで双方向コミュニケーションを促進するといった、言わばマネジメントスクールのマネジメント入門書に書いてあるようなことである。
マネジメントは、理論や知識の修得ではなく、実地での経験や実行から学ぶことが重要。ゴーンが、実際にやっていることはMBAの入門書に書いてあるようなシンプルなこと。正しいことを、シンプルにきちんと実行することが重要。

能力を発揮するには緊張感が必要

試練を恐れない。危機的状況に対応できる。仕事には緊張感を求める。では、危機的ではない状況ではどうすればいいのか。私は新しい目標レベルを設定したり、新たな挑戦の機会を与えるといった方法で緊張感を作りだしている。会社がこういう形で危機意識を持続することができなければ、社員のモチベーションは明らかに鈍り、真の収益性にとって大切なことを軽視するようになるだろう。緊張感はトップが作り出さなければならない。これも私が身をもって学んだ教訓のひとつである。
私は、私たち日産の人間には日産を復活させる責任があり、時間的猶予は限られていることをはっきりと口に出した。そして、復活に貢献するチャンスは社員全員にあるが、貢献したくない社員には二度とチャンスは訪れないと言い渡した。これでは脅迫ではないかと言われたことこともあるが、決して脅迫ではなかった。現実だったのである。私自身も、もし1年目にゴールを達成できなければ、二年目もここにいるという保証はないと伝えた。
組織及び個人の能力を発揮するために、常に緊張感を持たせる。平時であっても新しい目標を設定して、緊張感を作りだす。優れた経営者は、無意識のうちにこれをやっているんだと思う。

クロスファンクション

部門と部門、職務と職務のつながりが、見事に断ち切られていた。各部門ごとに社員は、自分たちは目標を達成しているとそれぞれ信じていた。これは日産に限らず、世界中の危機に瀕する企業に共通して見られる問題である。
そもそも顧客の要求はクロス・ファンクショナルなものである。コストにせよ、品質にせよ、納期にせよ、ひとつの機能やひとつの部門だけで応えられるものではない。どんな会社でも、最大の能力は部門と部門の相互作用の中に秘められている。しかし、どの会社にも概してこの隠された能力を無視する傾向がある。CFTは自然に人々が集まってくるところになく、職務と業務の境界線上に存在する。ここに人を集めるには、CFTのコンセプトを制度化して社内に根付かせるしかない。
経営課題を解決していくためにクロスファンクショナルチームを設ける。これは、ゴーンがミシュランでもルノーでも日産でも実施し、かつ効果をあげた施策である。部門の垣根を越えて、全社的な観点で問題を解決していくことが重要で、それを実行するための部署がCFT。どんな会社でも役に立つ考え方だと思う。

ガイドラインと優先順位

マネジメントの責任とは、会社が持つ潜在能力を開発し、それを100%具現化することだと考えている。ガイドラインや優先順位の設定もマネジメントの仕事だ。私のマネジメントスタイルはフォローしやすく一貫性がああると評されることがある。事実そうだとすれば、できるだけ明確なガイドラインを示し、重要度に従ってやるべきことの優先順位を決めるようにしているからである。こうすれば社員にも物事がはっきり見え、効果的な行動を取ることが出来る。
経営トップは責任を持って、優先順位が正しく守られているようにしなければならない。優先順位を正しく設定しなおすためには二つのステップが必要である。第一に、プランニングを中央集権化すること。第二に、実施に際しての明確な責任系統の確立である。社員全員が一点のあいまいさもなく、誰が意思決定し、誰が実施責任を負うのかを分かっていなければらない。
明確かつシンプルに。優秀な人は問題を複雑にしない。経営や会社、組織、課題に対する深い理解がないとこうはいかないと思う。

モチベーションが大事

私の経験では、企業の持つ、あるいは育むべき最も大切なものはモチベーションである。モチベーションは会社のすべてを左右する。そして、モチベーションはアイデンティティと帰属意識から生まれる。社員は自分の会社を大切に思い、会社に帰属感を感じられるようでなくてはならない。そうでなければ、残業したり、昼夜を徹して問題に取り組んだりしない。
多く人が、私がいかに一生懸命仕事をするか、どれだけ身を粉にして仕事に専念するかについて語っている。だが、私は誰かにそうするよう強要されたわけではない。まだ若い時期に「君に任せた」の一言で過酷な状況に放り込まれたことがプラスに働いたのだと思う。

これは人を動かし、会社を率いる方法として、実に適切な方法である。戦略を中央集権化し、ガイドラインや基準を確立し、重要な目標を明確にし、長期目標を立てる。

この作業が終わったら、しかるべき担当者を選んで、あとはそのチームにバトンを渡して走らせればいい。いちいち口を出したり、覗き込んだりして、ミクロマネジメントに陥ってはならない。彼らの仕事は彼らに任せ、業績だけをフォローする。少しでも道からそれたときは、修正できるよう手を差し伸べる。自分たちで解決する猶予を与え、彼らを信頼することだ。単刀直入に接し、ずばり大きなことを要求する。これが目標達成を促す最良の方法である。
経営陣がやるべきこと、やらない方がいいことの境目の話をモチベーションの観点から示したもの。経営陣の能力、現場の能力をきちんと理解しているからこそ力強く信念を持って実行に移せるのだと思う。

上手くいかないときの人間の特性

問題を表に出し、議論し、解決策を見つけなければならない。人々が問題について包み隠さず話したがらないのは仕方のないことだ。経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスの言葉は、まさに沈滞している企業の雰囲気と状況を端的に言い表している。「考え方を変えるか、あるいはその必要性がないことを証明するかという選択に迫られた場合、ほとんどの人は証明するほうに飛びつくものだ」
人に対する深い理解。これが経営判断をする上での材料になっている。

正しい判断が出来る子どもに育てる

リタと私は、親が気遣っていることが伝わるよう子どもたちに親密に接する一方で、彼らが自分で大事なことを判断する力を養うためにある程度の距離を置くようにしており、二つの接し方のバランスをとることを心がけている。
家や学校での教育は、子どもたちに生涯にわたる影響を与える重要なものである。だから、私たちは子どもの教育にはとくに気を遣っている。学校で教わることと家で教えようとすることが食い違ってはならない。両者の落差が大きすぎると子どもたちが混乱するからだ。混乱は自信喪失や懐疑主義的な傾向を招き、不安感を抱かさせてしまうことになる
子どもたちの学校を選ぶとき、私たちは三つの点に留意している。一つ目は子どもたちに一定の安定感を与える学校であること。私たちは生徒への関心があまりない学校や、教え方に問題があるといった評判の学校は避けてきた。二つ目は教育水準が高いこと。生徒に厳しい要求を突き付け、最高の力を発揮させようとする教師がいる学校に通わせたいと思っている。三つ目は道徳教育と価値観を重視する学校であること。リタも私も、子どもたちの教育にはとりわけこの点は欠かせないと考えている。
子どもには優しさと厳しさのバランスを考えて接しているとのこと。一貫性は大事。

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    • 「無知による機会損失は計り知れない。」

      機会損失とは、仮にある行動を取っていたら生まれたであろう利益を享受できない損失のことを言う。

      自分だけに与えられた、自分でしか歩めない道を歩んでいきたいと思う。
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