勝つためにトップが果たす役割を学べる『燃えよ剣』
燃えよ剣〈上〉 (新潮文庫) 司馬 遼太郎 新潮社 1972-05 |
新撰組副長をつとめ、明治維新の際、鬼神と恐れられていた生粋の喧嘩人、土方歳三を描いた作品。一つの思い、信念、目的に忠実に生きた土方からは、ある種の美しさを感じられる。ちなみに、「ある種の美しさ」、これは司馬遼太郎が作品を書く際のこだわりだという。
参考になったのは組織の長のあるべき姿。私心を捨て、強い意志を持ちただひたすら目的のために生きる。戦時の際には死を恐れず先頭に立って斬り込む。部下を愛する。長のあり方で組織の動きは全く違ってくる。
気になったのは、中途半端に学をつけ政治に入ってしまった近藤勇の末路。学ぶことと信念を持ち続けることの両立の難しさを改めて知る。彼は維新の際にどう動けばよかったのだろう。
下記、印象に残った近藤勇と土方歳三とのやり取り。
罪あるは斬る。怯だなるは斬る。隊法をみだすものは斬る。隊の名を汚す者は斬る。これ以外に、新撰組を富士山の重きにおく法はない。(土方)
歳、きくが、俺がもしその四つに触れたとしたら、やはり斬るかね。(近藤)
斬る。しかしそのときは私、土方歳三の生涯もおわる。あんたの死体のそばで腹を切って死ぬ。沖田総司も死ぬだろう。天然理心流も新撰組も、そのときが最後になる。―近藤さん。(土方)
なにかね。(近藤)
あんたは総帥だ。生身の人間だと思ってもらっては困る。奢らず、乱れず、天下の武士の鑑であってもらいたい。(土方)
わかっている。(近藤)