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周りの人をほんの少しだけ幸せにする
![]() | 人間の安全保障 アマルティア セン Amartya Sen 東郷 えりか 集英社 2006-01 by G-Tools |
著者のアマルティア・センはアジアで初めてのノーベル経済学賞受賞者。本書はそんな著者が、世界の現状を分析した上で、今後の進むべき指針を唱えた本。ホントに素晴らしい本だと思いました。
「人間の安全保障」というと何だか難しい話のように感じられますが、簡単に言えば「世界中の人達が平和に、そして幸せに暮らせるようになるにはどうしたらいいのか?」といったような話です。
本書は、まず「教育」の話から始まり、「教育の格差」を縮めることの重要性を説いています。その理由は、世界中のさまざまな問題の根源に「教育の格差」があるからでしょう。
世界の多数の人々を教育の軌道外におきざりにしつづければ、私達は、世界をさらに不公平で、さらに危険な場所に変えることになります。
グローバリゼーションの話(参照)のときにも書きましたが、教育を受けてない=字も読めないということは無知ってことです。無知であれば機会(チャンス)を得ることが出来ない。貧困の再生産の根源にはやっぱり「教育」が大きく絡んできます。その貧困自体も人間の生命に危険を及ぼしますが、更にやっかいなのが貧困が引き金となって起こる紛争です。上の文はそのことを要約している文だと思います。
以上のことを踏まえて、本書では基礎教育の重要性を以下のように説明しています。
基礎教育はただ技術を身につけさせる(それも大切ですが)ための制度ではありません。それはまた、世界の本質を、その多様性と豊かさを含めて認識することであり、自由と論理的な思考および友情の大切さを理解することなのです。
全くその通りだと思いました。なんで学校はこういった本当に大切なことを教えてくれないんだろう?教育が私達にもたらしてくれるもの、教育を受けていないとどういったことになるのか、そういった教育の本当の意味を、先生は生徒に教えないといけないはずです。(といっても、学校の先生の多くがそこまで「教育」について考えていないのも問題。)
で、本書は教育の話がひと段落すると、今度はグローバリゼーションの話に移ります。(グローバリゼーションの基本的な構造は過去ログ参照)
ここでのセン博士の考え方が素晴らしい。グローバリゼーションの既存の捉え方を批判しています。セン博士の主張を読むと、グローバリゼーションはみんなが言う西洋化とは異なり、西洋文明が発達する前から存在していたものであるということをまず認識させられる。それを踏まえて、「グローバリゼーションをその仕組みによってもたらされる全体の利益から考えることはもう愚かなことで、本当に論じなければらないのはグローバリゼーションによって生じる利益の配分の不公平をどう防ぐかにほかならない」と言っています。うなりました。その通りだと思います。
示唆に富んだ素晴らしい本でした。インドの核問題など、タイムリーな話もあるので興味ある方にはおススメです。
んでもって、ふとこの本を読みながら考えたことがあります。
各国の政府は、その国の所得の再分配機能をつかさどってるんですよね?(所得の再分配機能とは、国の中で貧富の差が拡大しないように、所得税とかで儲かりすぎてる人から利益を取り上げ、そのお金を国民全員に平等に使うという仕組み)
国の中ではそういった仕組みがあるのに、なんで世界にはないんだろう?
世界政府みたいなやつを作って、そいつが世界各国もしくは多国籍企業から所得税を取って、最貧国なんかに分配してやればいいんじゃないの?所得税が不満なら、世界各国の軍事費の数%でも取り上げればいい。核兵器1個作ったら10億円の税金を取ります!みたいに。そのお金を最貧国の学校設立と教師の費用にあてる。その学校での教育に関して文明の衝突とか起こる(何を教えるか?とか)とめんどくさいので、その学校で教えるのは文字の読み書きと四則計算のみ!これが終わったら卒業。こんくらいなら教科書もいらないし、そんなにコストもかからないでしょ。
インドも核実験なんかしないで、そのお金でパキスタンに学校を作ってあげれば良かったんだよ。それが自国の安全を維持する最も近い道だったに違いない。
と、机上の理論ですがいろいろ考えてみました。考えるだけなら意味ないじゃん、とか言われそうです。確かにそうかもしれません。けど、このエントリーを読んで、少しでもみんなに新しい世の中に対する見方とかが生まれてくれたんであれば、それだけで少しは意味があることなんじゃないかなとも思ったりもします。