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人工市場で学ぶマーケットメカニズム

人工市場で学ぶマーケットメカニズム―U‐Mart経済学編人工市場で学ぶマーケットメカニズム―U‐Mart経済学編
塩沢 由典 松井 啓之 谷口 和久


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人工先物市場のシュミレータU-martの使い方や実験方法といったU-martの取り扱い説明書的な部分と、経済学における人工市場という分析ツールの位置づけについて書かれた一冊。

僕がこの本を読んだのは1ヶ月くらい前になりますが、タイムリーに池田信夫先生がブログで「憂鬱な科学」というエントリーの中に次のようなことを書いている。経済学の行き詰まりを指摘し今後の方向性を示唆している、という点で本書と同じようなことを論じていたので抜粋してみる。

憂鬱になるのは、カーライルから160年たっても、同じような「経済学批判」が繰り返されていることだ。もちろん今では奴隷制を擁護する人はいないが、市場よりも国家の力を信じる人は多い。そういう人々がいうのは、「経済学は非現実的で、役に立たない」ということだ。たしかに経済学は、実証科学といえるかどうか疑わしい。たとえば新古典派経済学のコアである一般均衡理論の主要な結論(均衡の存在や一意性など)は完全競争や完全情報などの強い条件に依存しているが、そんな状況はどこにも存在しないから、自然科学の基準でいえば、新古典派理論は棄却されてしまうのである。

(中略)

経済学は、実証的なチェックを欠いたまま数学的な(見かけ上の)厳密性を高めてきた結果、現実との距離が広がりすぎて、市場以外の複雑な問題について何もいえないからだ。

このように経済学は、いまだにdismal scienceの域を脱することができない。それが世の中に認知してもらうために必要なのは、数学的なお話のテクニックを競うことではなく、複雑な現象を合理的に説明する実証的な分析用具を開発することだろう。
(池田信夫blog『憂鬱な科学』から部分的に抜粋)

まさしく人工市場の試みは池田氏が言う「複雑な現象を合理的に説明する実証的な分析用具を開発すること」を目指していると思う。(もちろんまだまだ道半ではあるけれど)

では、そもそもなぜ経済学や社会学を実証することが難しいのか?それは、経済や社会を構成する要素が人間であるからだと思う。人間(の行動や意思)というものは多様であり一義的に定義出来るものではないし、しかも厄介なことに個人の意思決定は他人に影響を与える。さらにその影響は無限にループし続ける。

池田氏の主張と少し重なるところもあるが、↑のことについて本書では次のようなことが書かれている。

「経済における行動の多様さやその可変性を議論に取り込むことはこれまであまり議論されてこなかった。事実が観察されなかったからではない。そのような観察は多種多様にあるが、それを理論に組み込む道筋がないかぎり、理論はその事態を無視せざるをえない。しかし、多様さこそが市場を成立させる基盤であることを考えると、これは経済学にとっては重大な問題である。」

U-martをはじめとする人工市場は上記に書いたような「人間が変数に組み込まれることによって生じる複雑さ」に対応するシステムである。それは、こういった人工市場が多主体モデルを採用しているからだ。さらに人工市場で用いられるエージェントには、自己の意思決定に他者の意思決定を参照するといった相互依存関係を組み入れることも出来る。いわば多様性というものを無視するのではなく、それを受け入れているシステムなのだ。このことが、新古典派経済学の行き詰まりを打破し突破口を開くきっかけになる、と著者は言う。

人間は単独で存在しているのではなく、互いに影響を及ぼしあっている―。
人間は多様な生き物だ―。

こんな当たり前のことを無視していては、従来の経済学や金融工学が行き詰ってしまっても当然だと思う。この辺の話は以前読んだ経済物理学の話ともシンクロするので、大変興味深かった。

これ以上書くと、とんでもない長さになってしまいそうなのでこの辺で止めとく。この分野の話はとても面白いのでちょくちょくフォローしていこう。

(それにしても池田氏の卓越した知見は素晴らしいものがある。こういった素晴らしいblogは無料で読めるくせに、普段受けてる大学の講義よりも面白いし勉強になる・・・ort。)

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英訳が出ました。

『人工市場で学ぶマーケットメカニズム』、ご紹介くださり、ありがどうございます。懸案でありました同書の英訳がでしまた。関心の方に紹介いただければ幸いです。

Y.Shiozawa, Y.Nakajima, H.Matsui, Y.Koyama, K.Taniguchi and F.Hashimoti, Artificial Market Experiments with the U-Mart System, (ABSS Vol.4) Tokyo: Springer. 2008.
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