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![]() | ベイジアンネットワーク技術 ユーザ・顧客のモデル化と不確実性推論 本村 陽一 岩崎 弘利 Amazonで詳しく見る |
『アンビエント・ファインダビリティ』にもしつこく書かれていたように、ネットワーク技術の進歩とモバイル端末の普及が、実社会での情報システムの利用形態に大きな変化を起こしている。ユーザがシステムに触れる機会と時間は日々増え続けているのだ。そのため、これからのユビキタス情報社会において、ユーザとインタラクションするシステムはどれだけユーザに優しいか、ユーザに適応しているかということが重要になってくる。そこでは、従来のシステム設計の概念とは異なった概念が必要となる。
なぜなら、従来の情報処理の枠組みが破綻しているからである。従来の定型的な情報処理は「プログラムがシステムの動作手順を事前に想定して完全に記述する」というものであった。したがって、多様なユーザや予想外の状況に対応するためには、そのすべての可能性をif-then方式でシステム設計時に想定しなければならないため、開発時の負担が非情に大きくなるという問題が本質的に存在した。しかし、多様性が増大していくと、システムの動作をプランとして記述するアプローチでは、おのずと限界を迎えてしまう。利用時に発生する様々な種類の不確実性には、決定的な枠組みではうまく対処できないのである。
ここで登場しったのがベイジアンネットワークである。ベイジアンネットワークは、統計的学習によりグラフ構造を持つモデルを構築し、そのモデルにより確率推論を行う技術である。複数の事柄についての確率的な因果関係をモデル化することができ、因果関係の強さを条件付き確率で表すという特徴を持つ。また、データを逐次更新しシステムを自己修正していくため、使用していくうちに進化・学習し、これまでの枠組みでは対処できなかった多様性や不確実性にも対処できるようになっている。技術の基盤には、ベイズ理論の概念(推測しなければならない未来の出来事はその事象の過去の発生頻度から計算で求めることができる)が使われている。
本書の前半をまとめると以上のような内容になる。後半は、システム設計やアルゴリズムや確率の難しい話が出てきたので、軽く目を通したくらいで精読はしてない。が、本書の要点は前半にあったと思うので、その点を再度、簡単にリストにしてまとめてみる。
本書では、ベイジアンネットワークが使われている例として、HP社やMicrosoft社の顧客サポートのシステム、KDDI社の映画推薦システム(参照:次世代コンテンツ推薦システムの共同開発.pdf)などを取り上げて解説している。
ベイジアンネットワークは、データマイニングやらCRMといったようなマーケティングの分野でも注目されているようですが、本領を発揮するのはシステム開発といったもっと根元にある部分にあるように思える。今後、この技術が進歩することによって「人に優しい社会システムの発展が期待できる」と著者は締めくくっていました。