金融立国試論

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櫻川 昌哉
光文社 2005-01-14

よく言われることだと思うが、アメリカは新しいものを採り入れ、古いものを捨て去るのが得意。その一方で、日本は成熟した技術を少しずつ改良するのは得意。両者は相反する特徴を持っているのだが、どうやらそれはその国の金融システムと大きな関係があるようだ。

2つの金融システム

金融システムは、証券市場を中心とした分権的なシステムと銀行を中心とした集権的なシステムの2通りに分けることができる。どちらのシステムが効率的かは議論の分かれるところであるが、その時代によって有効なシステムは異なるという。第二次世界大変後、銀行を中心とした金融システムとともに目覚しい経済成長を遂げたドイツと日本の経験から、銀行中心のシステムの優位性を主張する声が多かった。しかし、最近のアメリカ株式市場の活況は、市場型システムに対する再認識を迫る勢いがある。

銀行の働き

銀行を中心とするシステムの利点と欠点は表裏一体で存在する。それはどういうことか?銀行のシステムは情報生産機能であるといわれる。借り手企業と密接な案系を結ぶことによって市場では観察されない借り手企業の情報を蓄積したり、企業が支払不能になったときに効率よく債権処理を行うなど、さまざまな情報生産活動を送っている。また、銀行のもうひとつの機能として最近よく指摘されるのは、危機に陥った企業を救済する機能である。銀行を中心とするシステムに表裏一体の利点・欠点があると言ったのは、この部分のこである。

つまり、資金調達を株式市場や社債市場に依存している企業の債権は多くの投資家に分散しており、この企業が倒産寸前に陥ったとき、救済のためにこれら多くの投資家の意思を統一させることは難しい。これに対して、銀行貸出の場合、一般に大口の債権者は少数の銀行からなっているので、再建にあたっての利害の調整は比較的容易である。こういった銀行のシステムは、企業の存続をやみくもに伸ばす方向に働く。これが欠点にも利点にもなるのだ。最近は技術パラダイムの大幅な転換をともなう時代の流れの中で、銀行のシステムがもつ企業再生能力が裏目にでているとみることができる。

資本効率の悪い日本

日米の資本係数の推移これらのことは資本係数というものを見ても分かる。資本係数とは、一単位の産出量を得るのに必要とされる資本投入量のことであるが、ここに日米の資本係数の推移がある。これを見るからに90年代以降、資本効率が極端に低迷していることが分かる。市場経済がうまく機能していればこのような極端なことは起こらない。なぜこのようなことが起こったかというと、技術進歩とはまったく無縁の見込みのない業種に、銀行が延々とお金を貸し続けたからである。

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本書へのコメント

最後の図は勉強になりました。ぜひ使わせていただきたいと思います。

著者さんですか!これはありがとうございます。
>図は勉強に
是非ご利用くださいw
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