ぼくには数字が風景に見える

4062139545ぼくには数字が風景に見える
D. タメット 古屋 美登里
講談社 2007-06-13

素数に魅せられている。

素数はつるりとした形をしていて、ざらざらした個性のない合成数とまったく違っている。ある数字が素数だとわかるときには、頭の中でぱっとそういう感じがするので、言葉で説明するのは難しい。・・・特別な感覚だ。

ときどき僕は、目を閉じて・・・空間的に共感覚を味わう。すると、ほかの数字のなかから素数だけがとても美しい特別な形で浮かび上がってくる。・・・ほかの数字のなかで素数だけが孤立しているので、いっそう際立って見えて、ぼくの心を惹きつける。

著者のダニエル・タメットは、円周率を2万桁以上も暗唱でき、10ヶ国語をマスターする天才で、サヴァン症候群でアスペルガー症候群で共感覚者である。本書は、そんな稀な能力を持った著者が自身の半生を記したという大変珍しい本になっている。

上の抜粋した文章からも分かるとおり、著者には数字の1つ1つに色や形や大きさが伴って見えるという。また、外国語をわずか1週間でマスターしてしまうという脅威の記憶力や、難解な数式を瞬時にしかも暗算で解いてしまう神がかり的な計算能力を併せ持つ。それらの能力は、サヴァン症候群や共感覚といった一種の脳の障害とは切り離せない能力であることが最近の研究で分かってきた。

本書の魅力は、そんな天才的な頭脳を持った著者の脳の中、心の中が垣間見えることにある。人間離れした天才的な能力はもちろんのこと、「他人と違う」ことに苦悩する人間的な一面も書かれていた点がとても印象に残った。

多かれ少なかれ、人は、それぞれ世界の見え方や感じ方ってのは異なるもんで、そういった違いがサヴァンの人たちと僕らの間には分かりやすい形に現れたと考えられる。ダニエルが「他人と違う」ということをどのように認知し、克服していったかを知ることは、多様な価値観の受入れを否が応でも要求されるこの世の中では、とても重要なことのように思う。

数字が風景に見え、驚異の記憶力を持ち、神がかかり的な計算能力をもってしても、結局のところ、「人生とは何か」「生きるとは何か」という問いに悩む著者の心境を知り、人間の神秘に触れた気がした。

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