クルーグマン教授の経済入門

4532192021クルーグマン教授の経済入門
Paul Krugman 山形 浩生
日本経済新聞社 2003-11

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2008年にノーベル経済学賞を受賞しアメリカの経済学者の著書。以下、気になったところのまとめ。

・その国の生活水準のトレンドは、自国の生産性成長で決まる。国際競争力は何も関係しない。

・保険がかかってれば、医者も患者もコストなんか無視して、医学的にちょっとでも見込みがありそうなことは何でもやろうとする。これが弁護士どもの強欲さと医者の倫理の板ばさみになって保険料を高いものにしている。

・連邦準備銀行が経済をコントロールする能力で、すごく大事な点は、それがきわめて素早くて、機械的にできることだ。ほかの経済政策は、時間もかかるし法律も必要だったりする。税制の改革や公共事業は、編み出すまでに何年もかかる。

・保護貿易のコストは効率が下がることのみによって生まれるため多くの経済学者が思っているよりも軽微である。保護貿易が大恐慌を起こすというのはナンセンスな議論。

・戦略的通商政策のように歴史的な状況から生み出された国としての優位性も国際貿易には反映される。優位性がいったんできてしまうと、開発や生産のスケールメリットのおかげで、それはいっそう成長する。

・責任のともなわない規制緩和が生んだ80年代終わりのセービングス&ローン問題、90年代のロイズ問題も基本的な仕組みは一緒。まちがったき政府規制だって市場をダメにするけど、政府規制なしでも市場は勝手にイカレてくる。

・ファイナンスは、新しい価値創造には何も貢献しない活動になりかねない。


・LBOなどによって株価が一時的に上昇するのは、その国の経済全体としての利益向上とは関係ない。単に、今あるパイを配分しなおしただけ。つまり、労働者から取り上げたものを株主に渡しただけの話。企業リストラによる付加価値のほとんどは、効率向上よりは収入の分けなおしから来ている。また、サマーズ=シュレイファーの議論によれば、企業リストラに続いて起こることは、企業とその利害関係者との間の、明文化されていない契約の束(従業員の労働意欲や、借入先からの良い評判)を反故(=契約不履行)にしている。

・ベンジャミン・フリードマンによると、金融危機のリスクはだいたいいつも一定だが、ホントにたまにしか起きないので、直近の経験だけに基づいて確率を見積もると、極端な悲観論とまったく何の根拠のない楽観論の間で揺れ動く。

・最近の歴史からわかることが一つあるとすれば、それは期待ってものがどれだけはずれるかということ。歴史の教訓というのは、謙虚になりなさい、そしていろんな可能性を考えてみなさい、ということ。

上記を読んでみてもらえれば分かるとおり、クルーグマンはケインジアン。市場原理は素晴らしいけど、市場にすべて任せておけばいいというわけでもないし、民間が常に効率的なわけでもない。まともな規制は必要だし、財政政策や公共事業みたいな経済政策も役立つという立場。

歴史は自由放任の市場主義から、ケインズの統制・規律の取れた資本主義へ傾いている。

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      自分だけに与えられた、自分でしか歩めない道を歩んでいきたいと思う。
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