世界で最も複雑な組織の再建から学ぶ経営の真髄『巨像も踊る』

4532310237巨象も踊る
ルイス・V・ガースナー 山岡 洋一
日本経済新聞社 2002-12-02

やらなければならないことは迅速に実行すべし

経営難に陥った企業の再建をいくつも経験してきたが、最初に学んだ点のひとつはこうだ。難しいこと、痛みの伴うことをやらねばならないのであれば、それがどんなことであれ、迅速に実行すべきであり、具体的に何をするのか、そしてそれはなぜなのかを全員に周知手手知すべきだ。

ひとつの問題を長々と考えたり、問題を隠したり、部分的な解決策を小出しにしたりしながら景気が良くなって問題が解消されるのを待っていると、つまり、ぐずぐず先送りを続けていると、問題はかならず深刻化する。

私は問題を素早く解決して、新たな目標に向けて前進するのがいいと考えている。

企業文化は経営そのもの

IBMでの約10年間に、わたしは企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。ひとつの側面ではなく、経営そのものなのだ。

組織の価値は要するに、それを構成する人々が全体として、どこまでの価値を生みだせるかで決まる。ビジョン、戦略、マーケティング、財務管理の側面が正しければ、そして、経営システムの他の側面が正しければ、正しい道を歩むことができ、しばらくは成功を収めることが出来る。

だが、どんな組織でも、企業にかぎらず政府、教育機関、医療機関など、どんな分野であろうと、これらの正しさがDNAの一部になっていなければ、長期にわたって成功を続けることは出来ない。

成功している組織はほぼすべて、その組織の偉大さをもたらす要因を強化する文化を確立している。その文化は、それが形成されたときの環境を反映している。環境が変わったときに文化を帰るのはきわめて難しい。そして、文化が組織の適応能力を制約するきわめて大きな障害になる。

企業の文化は通常、創業者によって確立される。創業者の個人的な価値観、信念、好みによって作られ、創業者の風変わりな部分も映したものになる。すべての組織はひとりの人間の長い影にすぎないと言われる。

焦点を絞り、顔の見える経営で、実行する

成功を収めている組織そして成功を収めている経営者には、以下の3つの基本的な性格がある。焦点を絞り込んでいる。実行面で秀でている。顔の見える指導がすみずみまで行き渡っている。

結局のところ、焦点を絞り込んで成功を収める企業とは、自社の顧客のニーズ、競争環境、経済的な現実を深く理解するようになった企業である。これらの点を徹底して分析した結果を基礎に、具体的な戦略を策定し、戦略を日々の実行に結び付けていく。

じつに単純だと思えるが、分析作業をほんとうに客観的な方法で行っている企業は多くない。そして、この分析に基づいて明確な行動計画を策定でき、進捗状況を毎月調べていける企業はさらに少ない。

すぐれた戦略は細部を重視し、ビジョンを重視しない

すぐれた戦略は細部を重視し、ビジョンを重視しない。親しい投資銀行家が買収案件を持ち込んできたとき、検討するのは投資銀行による分析ではない。案件が自社の戦略にどのように適合するかを詳細にわたって分析する。

実際には、魅力的な買収候補に投資銀行の提案で初めて気がついたのであれば、戦略の構築に問題があったとまず確実に言える。すぐれた戦略なら決定的な穴、競争上の弱点、戦術的買収でそれを埋められる可能性をかならず見つけ出している。

戦略には限界がある

実行能力、つまり物事をやりとげ、実現する能力は、すぐれた経営者の能力の中で、もっとも評価されていない部分だ。

独自の戦略を策定することは極端に難しい。なぜならば、業界の他社の動きとはまったく違う戦略を策定した場合、それは恐らく極めてリスクの高いものになる。どの業界も経済モデル、競争構造によって枠組みが決められており、これらの要因は周知のことだし、短期間で変えることは出来ない。

また、仮に独自の戦略を開発できなとしても、それを他社に真似されないようにするのはさらに難しい。コスト構造や特許で、他社の追従を許さない強みをもつ企業は稀。従って、戦略が他社にとって永遠に超えられない壁になることはめったにない。

結局のところ、どの競争相手も基本的におなじ武器で戦っていることが多い。ほとんどの業界で、業績向上の原動力となる要因、成功をもたらす要因を5つから6つ指摘できる。どの業界でも新たな道筋を見つけ出すのは、不可能でないまでも、極めて難しい。

従って、実行こそが成功に導く戦略の中で決定的な部分なのだ。やり遂げること、正しくやりとげること、競争相手よりうまくやりとげることが、将来の新しいビジョンを夢想するより、はるかに重要である。

実行面で秀でるためには、組織に3つの要因が必要だと確信している。世界クラスのプロセス、戦略の明確さ、好業績を育む企業文化の3つである。

リーダーシップが組織の変革で最も重要

偉大な組織は管理されているのではない。率いられているのだ。運営されているのではない。勝利への熱意に燃えた人々によって、つねにさらに高い水準へと導かれているのだ。

最高のリーダーは好業績の文化を創り出す。簡単には達成できない目標を設定し、測定し、各人の責任を明確にする。最高の指導者は変革者であり、組織がつねに競争相手より早く適合し、前進するように促す。

顔が見える指導とは、個人による指導のことであり、組織の全員にとって顔が見えるものでなければならない。偉大な経営者は腕まくりをして、みずから問題に取り組む。スタッフの影に隠れることはない。他人の仕事を統括するだけの立場にない。毎日毎日、顧客、仕入れ先、提携先と顔を合わせる。

しかし、何よりも顔が見える指導とは情熱を意味する。私が知り合った偉大な経営者について考えてみると、全員に、勝利への情熱が強いという共通点がある。指導とは、距離を置き、理詰めで、冷たいものではない。顔が見えるものなのだ。

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      自分だけに与えられた、自分でしか歩めない道を歩んでいきたいと思う。
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