結束に効果的な宗教を学ぶ『宗教を生みだす本能』

4757142587宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰
ニコラス・ウェイド 依田 卓巳
エヌティティ出版 2011-04-22

宗教を信仰する集団は自然淘汰で有利に働いた

宗教は人間の本能として進化してきた。人々が宗教を守るのは、個人の人生を豊かにするだけではなく、共同体の規範に対する忠誠心から社会の質(結束、犯罪の抑止、互助の精神、嘘やごまかしの少なさ)を高めるからだ。

進化の原動力である自然淘汰は、つまるところ生存と、誰がより多くの子孫を残すかという問題である。宗教行動の社会的側面の多くは、集団内の強い結束や、戦時の士気の高さといった利点をもたらし、メンバーは多くの子孫を残した。そうした理由から、自然淘汰は宗教に有利に働いた。

宗教行動の基本要素

思春期前後から、人々は自分の共同体の儀礼、慣行や神聖なシンボルを学び、感情的に深くかかわる。儀礼のなかには、リズムをともなう活動(歌や踊り)や、痛みをともなう通過儀礼も含まれる。それは受けた者にいつまでも消えない記憶と、社会との深い結びつきを残す。

感情の高まった状態でいっせいに体を動かしたり歌ったりすることによって、人々は連帯感を高め、個人の利益より集団の利益を重んじ、集団を守ることならなんでもしたいと思うようになる。

宗教家は社会にとらせたい行動を暗黙のうちに決定し、その上で神の承認を求める。神は交渉者から示されたルールや行動方針を正式に認め、それに従う者への報奨と、従わない者への懲罰も決める。神の要求のなかにはたいてい、集団内の道徳規範と、外部への試練に団結して対処する心構えが含まれている。

人々を結束させる信念と実践のシステム

あらゆるところに監視者がいるという恐れは、社会にとって(特に裁判所や警察のない原始社会において)究極の実用価値がある。神の懲罰に対する恐れは、ほぼすべての者にルールや道徳律を守らせる。そしてそれらの規則は、先行する世代が神聖なことばや書として残しているとおり、神意とされているが、実際には社会が作りうるものなのだ。そのような観点から、宗教とは感情に働きかけ、人々を結束させる信念と実践のシステムである、と言える。

負担は寄食者を排除することに役立つ

宗教が信者に負担をかけるのは、何の寄与もせず共同体の便益を享受しようとする者を阻止するためと考えられる。共同体の結束にとって、献身と熱意を阻害する”寄食者”はきわめて有害になる。寄食者をつくらない策として、参加者に金銭や時間を要求したり、食事や服装に独自の決まりを設けるなどして負担をかけることが有効だ。

参加者への負担を大きくすることで、共同体は寄食者を排除できるし、メンバーの献身の度合いを確認できる。信用も高まる。独特の服装や習慣によって外部の人間とかかわりにくくなり、いっそう共同体のために時間を費やすようになる。厳格さは寄食者を減らすのだ。モルモン教は参加者に、給料の1/10だけではなく、時間も1/10奉仕するよう求めている。

宗教が結束を生み、結束は勝利を生む

強い信頼と協力、献身の価値は計り知れない。この種の結束があるかないかで、互いにたえず戦っている集団には徹底的なちがいが生まれた。

舞踏や行進のようなリズムをともなう活動をすると、集団内のメンバーは強い一体感を持つことができる。また人類は何らかの理由により、同じリズムに合わせて体を動かすことを楽しむ能力を獲得した。軍隊の行進行動のように、集団で行うリズミカルな運動は感情に力強く影響を及ぼし、高揚感とほかの参加者たちとの一体感を生み出す。集団の結束力のありなしが戦闘の行方を左右するため、結束は軍隊にとって最大の関心事である。

舞踏は共同体全体の活動であり、個人は共同体の一員として自分に影響を及ぼす活動に身をゆだねる。リズムと効果と習慣によって、彼は舞踏に参加せざるおえなくなり、自分の動きを共同体の動きに一致させることを求める。この強制または義務にしたがうことは苦痛ではなく、むしろ非常に楽しい。やがて踊り手はわれを忘れて、ひとつになった共同体に吸収され、恍惚状態になる。陶酔と言っていいこの状態には、心地よい興奮が伴う。舞踏は集団への帰属意識を育むためにはいい方法である。

組織運営に宗教の要素を取り入れる

優れた組織は、組織構成員の士気が高く構成員同士の結束が強いという特徴がある。それらの特徴の源泉を見ていくと、上述の宗教の要素がいたるところに見つかる。朝礼や決起会、定期的な大規模催事などは宗教の言うところの舞踏にあたるだろうし、新人研修や徹夜作業など共同で乗り越える試練などは宗教で言うところの通過儀礼にあたる。

一見するとリソースの無駄になるようなことも、組織力を高める上ではとても重要なことなんだと学んだ。恐らく、体育会系の社長、ヤンキー系社長は肌感覚でこれらのことを理解しているんだと思う。

ワタミじゃないが、結束力が強い組織には、それだけアンチが多いのもうなづける。誰にも寛容な組織では強くなれない。一部の人たちの高い共同体意識が、そこに適合しない人たちを排除するし、それが結果的に組織の結束力を高める。

機能組織の弱点を補う宗教思想

堺屋 太一著の『組織の盛衰』によると、組織は機能強化で強くなり成功し、共同体化で内向きになり衰退していく。また、機能を強化することと、構成員の福祉を高めることがトレードオフの関係にある点が、組織運営の永遠の課題である、と説く。

機能追求の厳しさを、組織の結束力を高めることに活用できるリーダーは優秀なんだと思う。厳しさに耐え活躍している参加者(多くの場合、自己犠牲を厭わない参加者)の特性を強化し、それについていけない、もしくは賛同しない参加者を排除していく。これを繰り返すことで、リーダーの意図する特性をもった参加者が残り、残った参加者同士でその特性が強化され、組織は強くなっていく。

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      自分だけに与えられた、自分でしか歩めない道を歩んでいきたいと思う。
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