人材育成のフレームワーク集『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』

「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)
「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト (光文社新書)酒井穣

光文社 2010-01-16
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グローバル化がもたらす2極化

グローバル化によって海外へのアクセスが容易になると、企業はとくに競争優位を見込めないような職務から順に、賃金の安い海外にアウトソースするようになる。日本において平均的な職務能力を持った人材の選択は2つ。1つは自分の職務能力を高めて勝ち組を目指す方法。これが昨今の勉強会ブームの原動力となっている。2つ目は、キャリアを追い求める道をあきらめつつ、自分の能力以下の仕事に甘んじる道。こちらはスローライフブームの原動力となっている。

マジョリティである消極的学習者への対応がキー

組織には学習能力という観点から見て、「積極的学習者(全体の10%)」「消極的学習者(全体の60%)」「学習拒否者(全体の30%)」の3種類お人材がいる。人材育成においては、組織におけるマジョリティであるこの消極的学習者(60%)の固定的知能感を払しょくして、彼らを積極的学習者に変えていくことが重要なフォーカスの一つになる。

人が成長するにはステップがある

よく知られる人材の分類方法に「Will-Skill Matrix」がある。これは「やる気(Will)」と「スキル(Skill)」の2軸で把握するためのフレームワーク。人材育成において採れる具体的なプログラムは、大きく分けて人材の仕事への「関与の度合い」を強めるものと、人材が採るべき具体的な行動への「指示の度合い」を強めるものの2つがある。関与の度合いを強めるということは二人三脚的な形で、一緒に仕事のやり方を考えていくコーチングに近い発送。これに対し、指示の度合いを強めるというのはトップダウン的なアドバイスや命令を増やすということ。マニュアルやチェックリストといった形式で詰め込む人材育成。

スキルもやる気もあるAクラスの人材には、関与も指示も必要ない。権限を委譲してしまうのがWin-Win。スキルは高いのにやる気がないBクラス人材には、そこそこの支持と高い関与が求められる。やる気が生まれればAクラス人材に昇格する。やる気はあるのにスキルがないBクラス人材には、多くの関与と指示が求められる。この手の人材は指示が多いとスキルはついてもやる気が失われる。従って、十分な指示によってスキルをつけた人材は「スキルはあってもやる気がない人材」にランクアップする。

このモデルが教えてくれる大切なポイントは(1)特定の人材の育成には、よく考えられたステップを踏む必要があり、(2)実務的なスキルを身につけさえるためには、やる気が犠牲になることがあり、(3)育成対象となる人材のマネージャーや育成担当者には育成対象の人材に対して適切な指示を与えられるだけの実務的なスキルが求められる。

好奇心は経験学習のドライバー

人間の学びは70%までもが経験だと言われている。組織行動学者デービット・ゴルフ教授によれば、人が経験から学ぶときのプロセスを4ステップのモデルとして表現している。実践(やってみる)→経験(データ収集)→反省(分析)→理論化(素人理論の修正)→実践。

経験学習は「なにはともあれ、やってみる」という、よく言えば「腰の軽さ」、悪く言えば「浅はかさ」から始まる。自分にとって経験のないことにチャレンジするには何らかのリスクがある。しかし、そうしたリスクを取らない限り経験学習のプロセスは始まらない。このプロセスのドライバーは「好奇心」。伸びる人材の共通要件に好奇心が入っているのは、好奇心の強い人材はこの実践のプロセスにおいて他人よりも優位になるからである。

受身的な座学ではなく、自発的な経験を優先する

ある知識を自発的に得る人材は、受身で得た人材とは違って、その知識を将来にわたって維持・拡大していくことが期待される。日本企業の新卒採用において歴史的に「部活動でのリーダーシップを学んでいる人材」が高く評価されるが、自発性の観点から言えばそれなりの理由があったと言える。逆に、受験があるからという外発的な理由で勉強することは「受身の経験」に当たり、これはあまり人材を成長させない。

規律と動機づけ

ボストン・コンサルティング・グループは強い組織の条件として「規律」と「動機づけ」の2点をあげ、マトリクスによる管理を提案している。「規律」のコントロールに優れた組織は緊張感がすべての従業員の間で共有されている。人材育成の文脈では、現時点の能力や成果だけではなく「ベストを尽くしているか」と人材の成長率を厳しく問う必要がある。成長をつねに意識させることは組織と個人に緊張感を与える。逆に言えば、緊張感のない組織に成長はない。「動機づけ」のコントロールに優れた組織は、従業員の満足度が高まり離職率が下がる。

ビジネススクールでなくとも、積極的に学ぶ人々の姿が直接見られる職場では、ミラーニューロンの働きによって多くの人材が自動的に学ぶようになる。学びへの情熱のパンデミック(大流行)を起こすことが出来れば、人を育てる社風は比較的短期間でも醸成できる。

教育効果は知識増加量ではなく、行動変化量で計測すべし

教育効果の測定は、人材育成プログラムがそのプログラムの対象となった人材の「知識を増加させたか?」ではなく、あくまでも「行動を変化させたか?」という問いに答えるような形式でなければなりません。

「どんな能力を鍛えれば、この会社で認められる存在になれるのですか?」若者にそう聞かれて、即答できるものが準備できていない会社は、長期的にその地位を弱めていく。なぜなら、求める優秀さの定義すらあやしい会社は、優秀な人材を育てる力がないから。

混乱期は必要悪。まず感情的ギャップを埋めるのが大切

チームビルディングにおいて、心理学者のタックマンが提唱したモデルがよく参照される。タックマンモデルとは、チームの形成から解散までを以下の5段階で表現したもの。

1.チームの形成期:存在意義や目的などを模索している段階
2.混乱期:政治的な立ち位地などをめぐり意見が対立する段階
3.統一期:お互いの意見を受容し、役割や責任が明確になる段階
4.機能期:組織に一体感が形成され、組織の力が発揮される段階
5.解散期:達成や他の制約条件によって解散する段階

ポイントはチームが形成されてから、それがきちんと機能するようになるまでの間には、メンバーの心理的な対立(混乱期)が不可避であること。であるならば、チームビルディングのコツは、混乱期を避けるのではなく、混乱期を早く抜けつつチームの統合を目指すこと。

チーム形成初期の論理的なギャップと感情的なギャップで、まず取り除かなければならないのは感情的なギャップである。感情的なギャップの存在を無視したまま、いきなり論理的なギャップを埋めようと議論しても表面的な合意に至るのは可能かもしれませんが、実際には人は動いてくれない。

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    • 「無知による機会損失は計り知れない。」

      機会損失とは、仮にある行動を取っていたら生まれたであろう利益を享受できない損失のことを言う。

      自分だけに与えられた、自分でしか歩めない道を歩んでいきたいと思う。
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