挑戦・苦難・成功・失敗が経営パワーを高める『経営パワーの危機』

経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)
経営パワーの危機―会社再建の企業変革ドラマ (日経ビジネス人文庫)三枝 匡

日本経済新聞社 2003-03
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三枝氏の著書3冊目。1990年以降、日本企業の経営パワー、経営人材が乏しくなってきていると危機感を募らせる著者は、自らの体験談をふまえた企業変革ドラマを小説にし経営者に「もっと経営陣材を育てるべき」と熱く語りかける。一貫しているのは、コンサルタントにありがちな机上の論理や抽象論で終わるのではなく、成果が出すために現実・現場・人のことを深く考えている姿勢だ。このあたりがとても勉強になる。

以下、参考になった文章を抜粋。

組織の発展段階

組織は年齢と規模によって成長要因及び危機の内容が変化していく。前のステージの成長要因が次のステージの危機原因となる。一つの節目の成功要因が次の節めの制約条件に転化する。

1.小規模組織による発展=創造性による成長→起業家的拡大の危機
2.機能別組織=機能分化・権限委譲による成長→商売感覚マヒの危機
3.事業部・プロフィットセンター=商売の基本サイクル回帰・自律性による成長→機能重複のムダ・統制の危機

全体像を示す

仕事の欠陥を事業や組織の全体像の中で指摘すると断片的に批判するよりもはるかに説得力を持つ。個人のパフォーマンスよりも全体のシステムの問題と受け取られるからである。トータルな絵は心理的バランスをつくりだす。

早期成果を示す

あまり大きな戦いを長期にダラダラと続けると、いつまでも成果が見えないので社員が息切れし、社内の批判的見方が力を増す。小さな成功でもよいから、早期の成果は社員が自信をつけるために必要。

組織の束ねが重要

理屈の戦いでは浪花節の人は戦略論にほとんどの場合負ける。だからといってその人たちが納得しているとは限らない。反感がたまれば、その戦略が正しいかどうかよりも、そのトップを「好きでない」という理由で彼らはやる気を失う。そうなれば戦略がいかに立派でも「束ね」の効果は発揮されず、戦略は空振りに終わってトップの信頼は失われる。戦略的に正しいことをしているちう確信が、孤独感や落ち目の感情を乗り越える武器になる。

戦略リーダーの弱みは人間関係である

経営の修羅場では戦略的企業家こそが成功確率を高めることが出来る。戦略論の束ねでは、数値目標と時間軸が明示され、それを達成するまでの道のりや具体的手法が設定される。だから戦略論のアプローチを取るトップの下では、何かをしているフリだけの社員はたちまち化けの皮がはがれる。

しかし、戦略論アプローチの弱みは、それが論理に走りすぎると現実から浮いてくるということだ。戦略型のボスに求められる最大の課題は、マキャベリズム的方向に行かずに、どれだけ精神的余裕を保って浪花節的心情を持てるかだ。これは容易なことではない。自分のロジックにこだわるあまり、弱い部下を追い詰めて、裏をかかれた刺されたというトラブルが起きる。

この会社は自分の子供

この会社は私が育てた、この会社のことは自分が一番分かっている、生かすも殺すも自分次第、というのは日経ビジネスの「敗軍の将、兵を語る」欄に登場する失敗者が、社内外の支援者を排除するのにしばしば口にする台詞である。

経営改革とは、自分で自分を改革するようなもの。素直に謙虚に周囲の言うことに耳をかたむけなければならない。高い人間性が求められる。

会社を熱くする戦略

強力な経営リーダーは、クールな戦略性とホットなリーダーシップを兼ね備えていなければならない。現代の経営リーダーは人間劇を演じるだけではな成り立たず、かといって戦略論に頼りすぎれば空論に堕する。重要なことは、クールな戦略がホットな集団をつくること。つまり戦略が内容的に有効であると同時に、社内の人々を熱くするシナリオが提示されなければならない。社員が「これは面白い」「これはやりがいがある」「徹夜をしてでも今日中にやり遂げよう」と共鳴し、燃えて皆で頑張り、最後には勝ち戦を収めるような話が日本企業の中であまりにも少なくなっている。

改革リーダーは覚悟して組織を不安定にさせる

改革リーダーは覚悟を固めて抵抗勢力と対峙し、組織が不安定化することを恐れず、短期勝負で一気呵成に進めなければ改革を成功させることはできない。ここで言う抵抗勢力とは、声だかに改革リーダーを非難したり、陰険な政治劇を演じようとする者ばかりではない。いわゆる様子見、お手並み拝見、気楽な外野席からヤジや噂話をたらい回しにする一見罪のない大衆層も、変化に対して抵抗やさぼりを決め込むことにおいては、むしろ最大の抵抗勢力になることが多い。

それを突き動かそうと思えば、組織の不安定化は避けられない。もっと正確に言うと、改革リーダーはあえて組織を不安定化させることが必要であり、それをなくして集団の行動を変えることは出来ない。

企業再建関連本参考リンク

性善なれど怠惰な人を前提に経営を行う『戦略参謀』
改革の現場で学んでいるかのような臨場感『V字回復の経営』

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      自分だけに与えられた、自分でしか歩めない道を歩んでいきたいと思う。
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